問題は未来であって、過去はどうでもいいのである
- 作者: アガサクリスティー,Agatha Christie,加島祥造
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2003/10/01
- メディア: 文庫
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で、内容なんですが、
イギリス社交界で著名なリネット・リッジウェイ嬢は、その類い稀なる美貌と才能、祖父の残した莫大な財産の持ち主であり、弱冠二十歳にして社交界ならず何処へ行っても人々の注目を集める存在だった。彼女は人が羨むものすべてを持っていて、まるで女王のようであった。
リネットは近々同じく社交界で有名なウィンドルシャム卿との婚約が噂されていた。そんな彼女はある時突然、財産も地位もない青年サイモンに恋をした。
だがサイモンは、女学生時代からの友人ジャクリーンと結婚を控えていた。しかしサイモンはすぐにリネットと結婚をした。そして許されない愛は友人を復讐鬼へと変えた。やがてドイル夫妻はエジプトへ新婚旅行に行くのだが、ジャクリーンは夫妻が行く所に必ず姿を見せ、かつての恋人と友人への殺意を露わにする。
果たして夫妻の、ジャクリーンの運命は…?
言わずと知れたミステリの女王、アガサ・クリスティの代表作のひとつです。私は観たことがないですが、この作品は映画化もされているようで。これは『そして誰もいなくなった』に代表されるような、所謂クローズド・サークル*1ものの推理小説です。ミステリとしての完成度はかなり高いです。でもそれだけじゃなく、途中で出てくる登場人物たちの言葉にも魅力があると私は思います。例をあげてみると、
「人生は虚しい。ちょっぴり、恋と ちょっぴり、憎しみと そして、おはよう。
人生は短い。 ちょっぴり、希望と、 ちょっぴり、夢と そして、おやすみ。」
「愛はすべてを正当化する、とよく人は言いますが、本当じゃない……」
そしてタイトルにもした言葉、これは小説の一番最後に書かれている言葉です。うん、まさにその通りだな、と。色々とドロドロした中で起こった事件(前書きでの著者の言葉通り非常にリアルである)だっただけに、この言葉に救われました。しかし、さすがはクリスティ。いつもながらの完璧なミスディレクション。もう、クリスティになら何度騙されても良いです。久しぶりに血が騒ぐ小説に出逢えました。というか、読むべくして読んだという気がします。明日から森博嗣のVシリーズ読み始めます!
*1:ミステリ用語のひとつで、何らかの事情で外界との往来、連絡が絶たれた状況(で起こる事件)のこと